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プラハの街を散策していて、たまたまですが、茶屋を発見しました。
イラーセク橋そばのダンシング・ビルを見学し、ちょっと歩きつかれたなあと思って、ぶらぶらと付近を散策したところ、こじんまりとした小粋な茶屋を見つけたのです。
残念ながら、この茶屋の正確な場所はもう忘れましたが、ヴルタヴァ川からちょっとはずれたところにあったということだけ覚えています。
写真にもあるように、「茶」と一文字書かれた看板をみて、妙に日本が懐かしくなってしまい、僕は店の中に駆け込んでしまいました。
この茶屋は、中国趣味の店主が経営しているらしく、室内装飾は凝っていて、また、店内でかかっているBGMなども実に東洋的なヒーリングというものを意識した、中々なごめる場所でありました。
肝心の茶の味の方は、お世辞にもあまり美味しいといったものではありませんでした。
メニューを見ると、チベットや中国のお茶はありましたが、日本茶はありませんでした。
そこには、店主のこだわりがあるに違いありません。
僕などは、茶に関してはまったくの素人ですので、ヨーロッパの地で、突然発見した東洋趣味の店に、ちょっとした感激を味わった次第です。
しかし、東洋を愛する店主の心意気といったものに対して、僕は少なからず共感を感じて、またこの茶屋の空間が醸し出す演出効果によって、旅の疲れを癒すことが出来たのです。
店主は、ちょっと陰気な顔をした若い男でした。
「中国に行ったことはあるか?」と僕が尋ねると、「ない」という返事でした。
店の中には、僕のほかに、店主の友人と見受けられる若い男がじゅうたんの上に寝そべっていましたが、どうやら、彼らはこのプラハの土地で、ヒッピー文化に似た快適なスローライフを満喫していると思いました。
人間は、自分と似たものに共感を覚えると同時に、また、正反対のものに憧れるという性質をもっているに違いありません。
ヨーロッパ文化の心臓のようなこのプラハの土地で、東洋文化を少なくともその室内装飾の豪華さという面において、ここまで再現したその茶屋の店主の執念、心意気といったものに、僕はちょっと胸を打たれた思いがしました。
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